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ドローンの操縦に資格や免許はいらないのか?
プロモーション映像の撮影や設備の点検、土地の測量など、ドローンはさまざまな場面で活躍します。
しかし、機体の操縦には高い技術が求められるので「資格はいらないのかな」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、ドローンの操縦に資格や免許が必要なのかという疑問にお答えするとともに、資格を取得するメリットをご紹介します。
ドローンの操縦にご興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
「ドローンの操縦に資格や免許はいらない」は本当なのか?
インターネット上で「ドローンを操縦するには、資格や免許の取得が必須である」という情報を目にすることもありますが、これは誤りです。
「飛行禁止区域で飛ばさない」「目視外飛行をしない」などのルールを遵守すれば、資格を持っていない方でも、自由にドローンを飛ばすことができます。
ただし、これはあくまでも個人利用の場合であり、測量調査などのビジネスにドローンを使うのであれば、特定の資格を取得しなければならないことがあります。
ドローンの操縦にあたり、資格の取得が求められるケースは以下のとおりです。
ケース①土地の測量
建築業界に欠かせない土地の測量調査は、作業員がTS(トータルステーション)で地上を測量する地上測量や、小型航空機で現場を上空から測量する航空測量が主流です。
しかし、近年では、低コストかつ短時間で現場を測量することができるドローン測量が高く注目されています。
ドローン測量の実施にあたり、資格や免許の取得は必須ではありません。
しかし、ドローン測量では、特殊な無線電波が用いられる大型機を使うことが多く、“第3級陸上特殊無線技士”の資格を保有していなければ、測量範囲が制限されます。
ケース②農薬散布
ドローンを使って農薬を散布することもできます。
農薬を積んだ農業用ドローンを操作して、畑や農園全体に農薬を撒くことによって、工数の削減や作業時間の短縮を図ることができます。
ただし、産業用マルチローター技能認定に合格して“オペレーター”にならなければ、農薬散布にドローンを使うことはできません。
人体に有害な農薬を搭載・散布したり、誤った操作方法で作業を行ったりすると、操縦者のみならず周辺の住民にも被害が生じる可能性があるからです。
なお、オペレーターの資格を取得するには、農林水産航空協会が指定する産業用マルチローター教習施設にて、操作実技教習と学科教習を修了する必要があります。
農林水産省が策定する「無人航空機利用技術指導指針」では、オペレーターを以下のように定義しています。
オペレーター
無人航空機を飛行させる者であって、一般社団法人農林水産航空協会(以下「農水協」という。)から安全かつ適正な空中散布等が実施できる技術や知識を有する旨の認定を受けた者
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ドローンの操縦にあたり飛行許可の申請が必要なケース
ドローンは資格や免許がなくても操縦できますが、飛ばしてはいけないエリアや、飛ばす際には許可を得なければならないエリアが法律で決められています。
ご自身が保有する土地や河川敷、屋内やネットで囲われた屋外スペースであれば自由に飛ばせますが、飛行禁止区域に該当するエリアでは、事前に許可を得なければなりません。
飛行禁止区域に定められているエリアの一例は以下のとおりです。
飛行禁止区域として定められているエリアの一例
・人口集中地区(DID地区)
・国会議事堂や首相官邸などの国の重要施設
・空港ならびに空港周辺
・外国公館ならびにその周辺
・防衛関係施設ならびにその周辺
・原子力事業所
・他人の所有地
・その他各都道府県・市区町村が定めるエリア
飛行禁止区域で許可を得ていないにもかかわらず「許可を得ている」と偽ってドローンを飛ばすと、法律により罰せられるおそれがあります。
無許可での飛行が禁止されているエリアは、国土地理院が公開している地理院地図や、スマートフォンアプリなどで確認することができます。
飛ばしてはいけないエリアだとは知らずに飛ばしてしまい、後悔することのないように、飛行禁止区域を事前に確認しましょう。
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ドローンの操縦に関わる法律
ここからは、ドローンの飛行に関わる法律ならびに法規制を解説します。
ドローンの操縦に関わる主な法律は以下のとおりです。
ドローンの操縦に関わる法律
・民法
・航空法
・電波法
・道路交通法
・文化財保護法
・個人情報保護法
・小型無人機等飛行禁止法
法律別に、ドローンとの関連性をご紹介するので、1つずつ確認してみましょう。
民法
民法では、他人の所有地におけるドローンの飛行について定められています。
具体的には、民法207条の「土地所有権の範囲」が関連しており、条文には「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と記されています。
ドローンの高度までは明記されていませんが、現在の法解釈に照らし合わせると300mが高度の上限だと考えられるでしょう。
なお、総務省による“「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン”では、以下のように記載されています。
土地の所有権は、民法第207条の規定により、土地所有者の利益の存する限度内でその土地の上下に及ぶと解されるため、土地の所有者の許諾を得ることなくドローンをある土地の上空で飛行させた場合には、その土地の具体的な使用態様に照らして土地所有者の利益の存する限度内でされたものであれば、その行為は土地所有権の侵害に当たると考えられる。
引用元:「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン
もし、土地の所有者に許可を得ずにドローンを飛ばすと、損害賠償請求を受けるケースに発展する可能性があります。
無用なトラブルを避けるためにも、他人の所有地の上空でドローンを飛行させる際には、事前に承諾を得てください。
参照元:e-gov法令検索「民法(土地所有権の範囲)第二百七条」
航空法
航空法では、ドローンの飛行禁止空域や、適切な飛行方法などが定められています。
許可を得ずに飛行禁止区域でドローンを飛ばしたり、不適切な方法でドローンを操縦したりすると、航空法違反となり罰金が科されます。
なお、以前までは200g以上の機器が規制対象でしたが、2022年6月20日に実施された航空法の改正により、現在では100gを超える機器が規制対象に変更されました。
航空法に違反しないように、飛行禁止区域や機器の重量などは事前に確認しましょう。
電波法
電波の安全性や効率的な利用を確保するために、利用できる電波の制限を定めた法律が「電波法」です。
この法律では、電波法令で定めている技術基準に適合していることを証明する“技適マーク”の有無や、ドローンに使われている周波数帯などが定められています。
技適マークがついていない機体を使ったり、基準を超えた無線電波帯を利用してドローンを操縦したりすると、電磁法違反となり処罰されます。
道路交通法
自動車やバイクだけでなく、ドローンも「道路交通法」の対象に含まれます。
道路交通法207条には「何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。」と記されています。
ドローンを離発着させるために車道や歩道を占領する行為や、道路上の低空をドローンで飛行させる行為などは、れっきとした道路交通法違反です。
車や歩行者の渋滞を招くだけでなく、人に怪我をさせるおそれもあるので、道路上でドローンを使用する際には、事前に申請手続きをして使用許可を得なければなりません。
参照元:e-gov法令検索「道路交通法(禁止行為)第七十六条」
文化財保護法
国が指定する重要文化財周辺でのドローン飛行は「文化財保護法」で固く禁止されています。
ドローンは安定性に優れますが、操作ミスや機体内部の部品の劣化などが原因で、落下したり、思わぬ方向に進んでしまったりする可能性もゼロではありません。
機体が重要文化財にぶつかり、破損や傷などが生じた場合には文化財保護法違反となり、厳しく罰せられます。
個人情報保護法
ドローンで撮影した映像に、人の顔や個人情報などが映り込むと、肖像権やプライバシー侵害などの観点から「個人情報保護法」の適用対象になります。
原則として、撮影のみで罰せられることはありません。
しかし、ドローン撮影で取得した個人情報を利用したり、無断でインターネットに公開したりすると、民事・刑事・行政上のリスクを負う可能性があります。
トラブルを防止するためにも、ドローンの撮影時は、人の顔や個人情報などを写さないように最大限配慮しましょう。
もし、撮影時に他人を撮影してしまった場合には、ぼかしなどの加工を施したうえで元画像を削除する、もしくは映った人から直接許可をもらうなどの対策を講じてください。
小型無人機等飛行禁止法
国会議事堂や空港、原子力事業所などの重要施設の周辺を飛行禁止空域と定める法律が「小型無人機等飛行禁止法」です。
小型無人機全般が該当するので、ドローンだけでなく、ラジコン飛行機やハンググライダーなども対象に含まれます。
ドローン飛行が禁止されているエリアであるにもかかわらず、許可なく機体を飛ばすと、懲役刑もしくは罰金刑が科されます。
ドローンの民間資格を取得するメリット
「ドローンの操縦にあたり資格がいらないのであれば、取得する必要はないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、ドローンに関わる資格を取得しておけば、さまざまなメリットを得ることができます。
以下で挙げる点に魅力を感じる方は、ぜひドローンの民間資格の取得を検討してみましょう。
メリット①申請手続きをスムーズに進められる
前項でも解説したように、飛行禁止区域でドローンを飛ばすには、国土交通省から許可を得なければなりません。
飛行許可を得るための申請手続きは、時間や工数がかかることにくわえ、定められている審査項目を満たさなければなりません。
しかし、ドローンの資格を取得することにより、ドローン飛行に必須とされる基礎知識を習得しておけば、煩雑な手続きをスムーズに進めることができます。
専門知識に基づいて申請手続きをスムーズに進められることは、大きなメリットです。
メリット②ドローンの操縦技術を習得できる
操縦技術を習得できるのも、ドローンの資格を取得するメリットの1つです。
ドローンをスムーズかつ安全にコントロールするには、高い操縦技術が求められます。
技術を習得しないままドローンを飛ばすと、誤操作により機器を落下させてしまったり、歩行者にぶつけて怪我をさせてしまったりするおそれがあります。
ドローンの資格を取得して操縦技術と知識を身につけておけば、トラブルが生じるリスクを抑えられるでしょう。
メリット③国家資格の取得時に学科が免除される
国土交通省に認定された民間資格を保有していると“一等無人航空機操縦士”や“二等無人航空機操縦士”などの、ドローンの国家資格を取得する際に優遇措置を受けられます。
国家資格の取得時の試験は「学科」と「実地」に分かれており、資格を持たない「初学者」と、資格を保有する「経験者」のどちらに該当するかによって、講習時間が異なります。
ドローンの資格保有者は「経験者」に含まれており、優遇措置により学科が免除されるので、講習時間や工数を削減できるというわけです。
一等無人航空機操縦士や二等無人航空機操縦士の資格取得時における、初学者と経験者の講習時間の違いは以下のとおりです。
国家資格取得時における初学者と経験者の講習時間
対象者 | 試験の種類 | 学科 | 実地 |
初学者 | 一等無人航空機操縦士 | 約18時間 | 基本:約50時間
目視外:約7時間 |
二等無人航空機操縦士 | 約10時間 | 基本:約10時間
目視外:約2時間 |
|
経験者 | 一等無人航空機操縦士 | 約9時間 | 基本:約10時間
目視外:約5時間 |
二等無人航空機操縦士 | 約4時間 | 基本:約2時間
目視外:約1時間 |
このように、経験者と初学者の講習時間を比べると、学科はおよそ半分、実地はそれ以上の差があることがわかります。
将来的に、無人航空機操縦士の資格の取得を視野に入れるのであれば、民間資格の取得を視野に入れてみてください。
メリット④ドローンに関わる仕事で有利になる
ドローンの汎用性は高く、その優れた機能性から、今後さまざまな場面や用途で活用されると予測されています。
このような背景から「将来的に、ドローンに関わる仕事をしたい」とお考えの方は、民間資格の取得を検討したほうがよいです。
資格を取得すると、履歴書の免許・資格欄に記載できるので、ドローンを使う会社への就職時にアピールポイントになります。
複数の民間資格を保有すれば、高い操縦技術や知識があることの裏付けにもなるので、面接官からも高くされるでしょう。
操縦技術や知識の習得だけでなく、このようなケースにおいても、ドローンの資格は役立ちます。
ドローン撮影会社を選ぶ際は保有資格も確認したほうがよいのか?
「空撮のクオリティにこだわりたい」「申請手続きを代行してほしい」と思われる方のなかには、ドローン撮影会社への依頼を検討されている方もいらっしゃるでしょう。
ドローン撮影にあたり資格の取得は必須ではないものの、可能であれば民間資格や国家資格を保有している業者を選びたいところです。
取得している資格を確認すれば、業者の操縦技術や知識、そして安全性を推し量ることができます。
在籍しているスタッフが、特殊無線技士や安全運航管理者、ドローンスクールの講師資格などを取得している業者であれば、ドローン撮影を安全かつスピーディに進められます。
ドローンの操縦にあたり資格はいらないが取得するとさまざまなメリットがある
いかがでしたでしょうか。
ドローンの操縦には高い技術や知識が求められますが、使用にあたり資格の取得は不要です。
ただし、ドローンを活用した測量調査や農薬散布では、特定の資格を取得しなければならないケースもあるので、この限りではありません。
なお、私有地や河川敷などのエリアでのドローン飛行は認められていますが、重要施設や他人の所有地での操縦は禁止されています。
飛行禁止区域でドローンを操縦すると法律で罰せられる可能性もあるので、事前の調査や許可申請は必須です。
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プロモーション映像の撮影から測量調査まで幅広く対応しておりますので、お気軽にご相談ください。